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講義:第四回目
3.中獣医学の基本的な特徴
 現代獣医学と比べて、中獣医学は独特の理論体系を持っています。適切な弁証方法、特別な治療手段、科学的な薬剤の調合等です。基本的な特徴は以下の二つに要約されます。
(一)整体観念
 整体観念(Concept of wholism)とは整体を出発点として、物事の統一性を研究し、完整性と関連性を考える方法です。分かりやすくいうと、体全体の臓腑器官、生理、心理面に加えて、その人間の置かれている外の環境との関係の統一、整合をさします。中獣医学の観念は動物体が一つの有機的な統一体だと考えています。動物体は外界的な環境と大きな統一整体を構成しています。動物体の疾病前に、内的環境のバランスを整え強化し、外的環境に影響されにくい完整された動物体の予防と治療を行うのです。
 初期の中獣医学は、ほとんどが解剖学によって動物体を認識するものでした。しかし、この解剖学を掘り下げて研究すると、生命力を持っている動物体は、複雑な整体系統に存在するものです。この構成を分割して、部分的な研究が行なわれましたが、この部分の間に有機関係が壊されてしまいます。よって、中獣医学では整体観念を指導とし、動物体の統一性、完整性、関連性と前提にして、整体の効能を研究して来ました。そこで、藏像理論と経絡学説が確立され、整体水平、構造関係、功能動態の上で動物体をとらえることが実現されました。動物体の各部分は各々それ自身の機能があり、相互に役立ち、影響しています。鳥は空を自由に飛び、大地を走る動物は飛ぶように疾走することができ、魚類は海の中で自由自在に泳ぐことができます。動物は大自然の一部として、生命・健康な状態を維持するために、必ず周りの環境の中から日光、空気、食物、水を得なければなりません。また、動物はいつでも周囲の環境(例えば、生態環境の中には病気を引き起こす微生物がいたり、気候環境の中には風、寒、湿、乾燥、火があり、地理環境の中には東、西、南、北、中などがあります)に影響されながら、体内のバランスを整えます。自然界は動物になくてはならないものを供し、また、自然界の変化は動物に影響を与えます。通常ならば動物が自然界の変化に応じて体を調整することができますが、もし、自然界の変化が動物の生理の調整範囲を越えてしまったら、動物と自然界の間のバランスが崩れ、疾病を起こすと考えられています。病気になると、一部の疾病は他の部分または全身に及び、内臓の病気は表に表れ、表の病気は内臓に影響します。従って、治療する場合、局部を刺激することで、全身の病気を治すことができたり、全身を整えることで局部の病気を治すことができたりします。動物体と自然界の統一性とは、動物体は自然界と切っても切れない関係にあることなのです。
(二)弁証論治
 弁証論治とは、中獣医学理論の基本原則に基づいて、動物の疾病を知り、発病の原因を分析・検査し、適切な処方を出し、そして発病の原因、性質、疾病の所在する部位、正気・邪気の盛衰などをまとめで治療するための基本原則です。すなわち中獣医学独自の疾病の研究、処理する方法であります。
 動物体は環境、気候、食事、体質、体形などによって、疾病と発病の原因が違ってきます(例えば、同じ病でも発病の季節によって病症が違ったり、同じ薬でも動物体によって効果が違ったりします)。現代獣医学は動物体に現れた病理的な変化を分析し、各病原因、性質、部位によって、収集された情報から症状と体質を分析し、その病状に基づき中獣医学の理論により分析し、治療方針を決定します。動物疾病に対する認識に於いては、疾病部位の変化を注意するばかりでなく、整体の反応・変化をより注意しなければなりません。薬物に対する認識に於いては、薬物成分よりも整体功能を重要視します。つまり動物体の反応によって、薬性を確定するのです。整体に対する異常があるかどうかで薬効果を判断すべきなのです。中獣医学の“証”の病理学に基づいて、動物体の疾病の診断結果と治療方法を導き出します。“証”とは証拠という意味があります。証は疾病の状況・特質を述べることです。証は症(症状)と病(病名)より更に疾病の特徴を具体的に示します。例えば、咳の病因は風寒、風熱、凉燥、温燥、痰及び疲れなどいろいろな原因で起こります。表と裏は疾病の所在する部位を示し、寒と熱は疾病の性質を示し、虚と実は体の正気と邪気の盛衰を示します。臨床で同じ症状でも違う病状が表れることがあります。明らかに同じ疾病でも発病の季節・体質及び進行している状態によって、表われる証はすべて違ってくるからです。従って中獣医学とは弁証論治の方法を応用して、四診で得た一連の症状に対して分析・総括し、それによって正しい治療方法・薬を選ぶことなのです。

4.中獣医学の学習方法
(一)中獣医学に含まれる哲学を理解する
 科学史上で示されたように、如何なる学問の樹立と発展に対しても、哲学の角度から一定の認識方法が取られるのは当然のことです。中獣医学の形成と発展の過程に於いて、早期客観論と弁証法思想から受けた影響は大きいものでした。その中でも陰陽五行理論、精気学説は既に中獣医学理論にとけ込んで、一体化しています。それ故、中獣医学を学ぶとしたら、その中に含まれる哲学の習得は不可欠な条件となってきます。
(二)中獣医学の認識観点を理解する
 古代、生産力と科学技術力が極めて低いレベルに限られていた状況下では、中獣医学の動物体及びその疾病に対する研究の過程に於いて、動物体の物質要素を精密に分析することは不可能に限りなく近いことでした。しかし、私たちの祖先が知恵を働かせ、全体的、運動的、総合的な視点から研究を積み重ね、歴史的に限られた不利な条件を克服し、見事に整体観念、弁証論治に基づいた理論を確立しました。中獣医学の認識観点の特殊性を理解して初めて、その本質と特徴を把握することができるのです。
(三)理論と臨床実践を緊密に
 中獣医学の形成と発展は、何千年の歳月を経て今日に辿り着いたものであるために、使われる言葉の大部分が古くて抽象的なものが多く、文献の意味が判りにくくなっています。更に大量の処方箋やツボの位置や脈の特徴等、記憶しなければならない関連知識が数多く存在するため、学習するには相当な困難があると考えられます。しかしながら、中獣医学は実践性の高い学問であるため、臨床診察、典型的病例の分析等を通して、理論と臨床実践を緊密に結合しながら研究していくことで、基本理論に対する理解が深まり、臨床技術を高めることができ、困難を克服することができるでしょう。
(四)中西獣医学の結合
 中獣医学と西洋獣医学はそれぞれ独立体系をとっていますが、その研究対象及び最終目的が同じであることには違いありません。従って、両者を相互結合することの必要性と可能性が十分に考えられます。学習方法としては、現代獣医学の理論を用いて、中獣医学への理解を手助けするのもいいでしょう。無論、何でも無理矢理に対照することは避けた方が良いでしょう。しかし、現代科学に於いて解釈不可能な部分は、決して軽率に否定すべきではありません。
 
―――――次回は、「陰陽学説の基本概念」について勉強します。
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