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動物用漢方薬学
講義:第四回目
生薬の性能
 生薬の性能とは中獣医学の基本理論の下で、長期にわたる経験を積み重ねた薬用の規律です。具体的には四気五味、升降浮沈、帰経作用など効果によって種々の薬物の性味と効能を説明することです。一般に薬性と称しています。
1.性味
(一)四気
 四気とは、生薬を寒、熱、凉、温の四つの薬性質です。寒と凉、熱と温の薬性質は、程度が違いますが、だいたい同じようなものです。凉は寒よりやや冷やし、温は熱よりやや温めます。また、どちらにも属さない生薬は平と言います。しかし、平性生薬はまだ四気の範囲以外を超えず、単独で気に属すことができないので、習慣でまだ四気と称します。
 薬性質の寒、熱、温、凉はお互いに相応しています。病症に応じて漢方を用いますが、病症は熱証と寒証の二つ種類に分けられます。熱証を治すには寒、涼性の薬を用い、寒証を治すには温、熱性の薬を用います。一般に解熱、解毒、涼血、瀉下、体内の熱を下げるなどの作用を持っている薬物は寒・涼性です。例えば、石膏(セッコウ)、薄荷(ハッカ)など。風邪を取る、体を温める、壮陽、気を補う、補血作用などを持っているなど寒証を治す薬物は熱・温に属します。肉桂(ニッケイ)、乾姜(カンキョウ)など。
 漢方薬は服用前に必ず寒、熱、凉、温をはっきり理解した上で、動物体に合った漢方薬を服用しなければなりません。例えば寒証に寒性薬を用いたり、熱証に熱性薬を用いると、どのような悪い結果になるのか予測できません。
(二)五味
 生薬には、辛(辛い)、酸(酸っぱい)、甘(甘い)、苦(苦い)、鹹(しおからい)の五つの味があるとされています。これは生薬自身が持つ味です。味はほとんど人の味覚で分別できます。例えば細辛(サイシン)は辛い、烏梅(ウバイ)は酸っぱい、甘草(カンゾウ)は甘い、黄連(オウレン)は苦い、海藻は塩辛い味をすることが分かりました。しかし、一部の薬味は臨床治療の過程で認識されました。例えば、葛根(カッコン)は発汗、解熱、発疹作用があるので辛味に近いような味がすると認識されました。その他、渇を止め、利尿作用のある薄味薬物には昔から薄味が甘味に近いと主張していることがあって、同じ味に混同しやすいので、習慣ではまだ五味と称します。茯苓(ブクリョウ)、猪苓(チョレイ)など。
 ≪素問・藏気法時論≫の中に書いている“辛散、酸収、甘緩、苦堅、鹹軟”では五味効能に関する知識の基本となり、また、歴代の医者たちは絶え問なく実験によって、更に五味効能に対する深い認識を得てきました。
辛は血液、気の流れがよくなり、体を温め、汗を発散させ、痛みを止めるなどの作用があります。例えば、麻黄(マオウ)、紫蘇(シソ)は発汗、解熱作用があります。白芥子(ビャクガイシ)、天南星(テンナンショウ)は積滯を消除し、滞りを散す作用があります。センキュウ、紅花(ベニバナ)は血行促進ができます。木香(もっこう)、陳皮(チンピ)は気の流れをよくすることで痛み止めができます。
酸は疲れの回復、血液の量や流れを整える働きなど作用があります。例えば、五味子(ゴミシ)は止汗、強壮、滋養作用ができます。五倍子(ゴバイシ)は下痢、収斂、消炎に用います。
甘は緩和、強壮、滋養、血を補い、痛みを緩め、薬性を調和するなどの作用があります。例えば、党参(トウジン)、熟地黄(ジュクジオウ)は強壮、補血にききます。甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)は神経の緊張を緩め、痛みを止め、薬性を調和する効能があります。
苦は瀉下、体内の熱を下げ、熱の風邪を駆り、疲れを癒すなどの作用があります。例えば、知母(チモ)、梔子(クチナシの実)は清熱、解毒作用があります。黄連(オウレン)、黄ゴン(オウゴン)は解熱、湿熱の邪をとる作用があり、大黄(ダイオウ)は胃腸の熱を下げ、解毒作用によって、瀉下、通便によくなる効果があります。杏仁(キョウニン)は咳を止め、のどの痛みを緩和する効能があります。
鹹は腫れなどの塊を柔らかくし、通便がよくなり、水分を調節するなどの作用があります。例えば、海藻は腫れを柔らかくする作用があり、芒硝(ボウショウ)は瀉下、通便がよくなる作用があります。
 各種の薬物は「四気」の性質と「五味」の味があるので、薬物の功能を十分に理解するならば、必ず薬物の性と味を一緒に合わせて分析しなければなりません。例えば、紫蘇(シソ)の薬味は辛、薬性は温であり、辛は発汗、温は体を暖める効果があるので表面の寒証の治療に効きます。薄荷(ハッカ)の薬味は辛、薬性は涼であるので、表面の熱を下げることができます。薬物の性と味の作用はただ薬物作用に関する一般的な共通認識であり、各薬物の特別な治療作用を理解することがさらに重要であり、そうすれば臨床上で正しく薬物を用いることができます。
2.昇降浮沈
 昇、降、浮、沈とは薬物が体内に入った後、それぞれの作用の方向性のことです。昇と降、浮と沈が相対になります。昇とは上昇、降とは下降、浮とは発散、沈とは鎮静・収斂の作用を指します。昇浮の薬は主に向上、向外、発汗、寒を去り、湿を取り、陽が上がるなどの作用があります。沈降の薬は向下、向内、降気、咳を止め、止汗、陽が下がるなどの作用があります。
 各種の病症は病位と病勢などにより応用します。
 動物体の病気の部位は上部、下部、表部、裏部の4種類があります。病気の部位が上部と表部にある時、昇・浮の薬物を使います。例えば、外感風寒表証には麻黄(マオウ)、桂枝(ケイシ)などの昇・浮薬で治療します。逆に病気の部位が下部と裏部にある時、降、沈の薬物を使います。例えば、腸の熱結乾燥によって起きた便秘には大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)など沈・降薬で治します。病勢も上逆と下逆があり、もし病勢が上逆であれば沈、降薬を使います。逆に病勢が下逆であれば昇、浮薬を使います。例えば、肝火が盛んで、気火とも逆上せたことによる目の充血・かすみ・腫れなどの症状には石決明(セッケツメイ)、龍胆草(リュウタンソウ)などの沈・浮薬を用います。長期な脱肛、子宮脱垂は党参(トウジン)、黄耆(オウギ)、昇麻(ショウマ)などの昇浮の薬を用いて、気の流れをよくし、元気をつけます。
 昇降浮沈の方向性は、薬物の薬性、薬味、性質の重さ、及び加工方法、漢方の配合などの要素で決められました。昇浮の作用がある薬物には辛・甘味、温熱性のもが多く含まれています。沈降の作用がある薬物には酸・苦・鹹、寒凉性のものが多く含まれている傾向があります。軽い花や葉などの薬物にはほとんど昇浮の作用があります。重い実や鉱物の薬物には沈降の作用が多いと考えられています。また、加工方法や配合などの違いよって、薬物の昇降浮沈の作用を変えられます。例えば、お酒を加えて一緒に炒めると、薬物の作用を昇に変えたり、塩炒めによって降に変えたりすることができます。もし昇浮の薬物を大量の沈降の薬物と一緒に使用すると降に変化したり、逆に沈降の薬物を大量の昇浮の薬物と一緒に使用すると昇に変化したりすることがあります。これで分かるように、昇降浮沈の基本理論をよく理解すれば、臨床実験で薬物を思い通りに使うことが出来ます。
 
―――――次回は、帰経について勉強します。
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